明治大学付属中野中学校の卒業生に学校のリアルをインタビュー
ゆっくり流れる時間の中で、自由気ままに好きなことに没頭する。その時間には無限の可能性がある。
聞き手:
インタビュー日:2022年12月29日
卒業生経歴
明治大学付属中野中学 → 明治大学付属中野高校 → 明治大学(インタビュー時1年生)
インタビュー中から独特な雰囲気を醸し出すSくん。ゆっくり、少しのんびりした話し方なのに、大学では週6日アメフトに打ち込む熱い生活を送っていて、どこか芯があるようにも感じます。
そんなS君を形作った中高時代はどんなものだったのか。好きなものに好きな時に好きなだけ没頭できたからこそ、今の姿があるように思えます。それでは、インタビューをお楽しみあれ。
男子校だからこその仲良さ、ノリの良さ。しかし恋愛は難しい
ーー明治大学付属中野中学に入学しようと思った理由はなんでしょうか。
親の導きによって気づいたら中学受験をしていて、そのまま明治大学付属中野中学を受け、合格したので入学しました。大学付属の学校を受けていて、明治大学付属中野中学は標準的な問題を広く出す傾向だったので相性が良かったのも合格できた要因だと思います。他には立教新座も受けましたが落ちちゃいました。
ーー親の導きということで、中学受験を嫌に思ったことはありましたか。
嫌ではなかったです。むしろ夜遅くまで塾で勉強をしている特別感があって楽しかったです。小5の冬から中学受験を始めたので、受験勉強は1年間だけで、飽きずにやり切れました。
ーー明治大学付属中野中学に対するイメージは入学する前と後で変わりましたか。
いえ、変わりませんでした。入る前は、男子校で恋愛できないなぁというイメージでした。入学したら案の定できなくて(笑)でも卒業した今振り返れば、男子校も悪くなかったなと思います。
男子特有の、騒ぐ時にはクラス全員で一緒に盛り上がる感じが楽しかったです。その雰囲気はあらゆる場面で感じることができました。体育祭、修学旅行はもちろん、普段の教室内でもです。女子に配慮せざるをえない共学では、経験できない楽しさだったんじゃないかと思います。
ーー共学に比べて、女の子と恋愛するチャンスが少ないことに対して、不満はなかったのでしょうか。
自分自身はそこまで恋愛にこだわりがないがないので、女子と交流できないことに不満を持つことはなかったです。周りの人は恋愛できないことに対して不満を持つ人はいました。みんな基本的には彼女はいなかったですから。
ーー友達に彼女がいないということはどうしてわかるのですか。
発言や行動です。高校生になっても男子校中学生のノリのままなので。それだと女子とは仲良くできないよなと(笑)それに付き合いだすと少し言動も変わってくると思うんですよ。でもみんな変わらず、男子校だなぁという感じで。でもそれが楽しかったんです。
ーー男子校特有の楽しさというのが少しわかった気がします。
大学受験を気にせず、やりたいことに没頭できる(一夜漬け勉強とルービックキューブ編)
ーーそれでは勉強面についてお聞きします。勉強面は大変でしたか。
勉強面で大変さや厳しさを感じたことはなかったです。試験勉強は一夜漬けで乗り切っていました。僕は下位15%くらいの順位でしたが、それぐらいで良いのであれば一夜漬けで乗り切れます。それでも学校の授業についていけなくなることはありませんでした。
僕の周りは一夜漬け組が多かったですが、明治大学以外の大学を目指している少数の生徒達は、ガッツリ塾に通って勉強しているみたいでした。
ーー普段はあまり勉強しなかったとのことですが、学校から帰ってどんなことをしていましたか。
お金がなかったので、お金を出来るだけ使わない遊びをしていました。ラジオを聴きながら散歩したり、友達と会ってぶらぶら歩いたり、安い飯屋に一緒に行ったり。東中野に安くてうまい飯屋があるんですよ。
あとは、沢山寝ていました。成長期の睡眠時間は大事ですよ。
ーー明治大学への推薦がもらえなくなる危機感を感じたことはありませんでしたか。
一時期だけありました。高校では学年全体で生徒が400人強いますが、下から10%、つまり40人くらいは明治大学への推薦がもらえません。僕はいつも下から60番くらいだったので、基本的に推薦は貰える順位でした。でも、一時期成績が急降下したことがあって。
ーーそれは何か原因があって?
コロナですね。コロナで休校の期間が長くなって、オンラインで授業動画が配信されていた時期がありました。自宅でその授業動画を見て自分で学習を進めなくてはいけなくなりました。しかし僕は授業動画を全然見なかったんですね。みんなも見ないものだと勝手に思い込んでいて。
ーーでも自宅待機で授業動画も見ないと暇じゃないですか。何かやっていたのですか。
授業動画を見る代わりにやっていたのがルービックキューブです。この休校期間中にルービックキューブの早解きを極めようと思い、ずっとルービックキューブの練習に没頭していました。休校明けに学校の友達に見せて驚かせてやろうと意気込んでストイックに練習していました。
そしてついに、12秒で6面を揃えることができるようになったんです。
ーーそれはすごい!すごいですが、成績はどうなったのでしょうか。
しっかり落ちましたよ。明治大学への推薦を貰えない水準まで。
いや、誤算だったんです。みんなも自宅で勉強なんて絶対してないはずだって思ってたんですが、それが大間違いで、みんなちゃんと休校中も勉強してたんですよ。実は真面目な子ばかりなんですね。驚きでした。
それに比べて全然勉強していなかった僕は成績が急降下。このままでは明治大学への推薦が貰えない!となり焦って、元の成績に戻るまで勉強に力を入れました。
ーーやはり推薦が貰えなくなるかもという危機感は、勉強へのモチベーションになりますね。学校として成績が振るわない生徒へのフォローは何かありましたか。
中学までは、定期テストの成績が悪いと補習がありました。テスト後の1週間くらいの期間に実施されます。僕自身は補習対象になったことがないので詳しくはわかりません。
僕は数学が苦手で補習対象になりそうな学力でしたが、なんとかテスト勉強を頑張って、補習にかからないようにしていました。
大学受験を気にせずやりたいことに没頭できる(部活と山手線徒歩一周編)
ーーそれでは部活についてお聞きします。何か部活動はしていましたか。
はい、中学は軟式テニスを、高校では硬式テストをやっていました。中学ではテニスコートは週5日使えるんですが、部員達はみんな週2日とか週3日くらいのペースで好きな時に参加していました。僕が所属していた時はそんな感じでちょっと緩かったのですが、今は新しい先生が顧問になって、もっとちゃんとした部活動になっているようです。
高校時代でも硬式テニス部の練習は自由参加で、少し物足りなさを感じていました。ただ、高校3年生の終わりの方まで、受験勉強に気を取られることなく部活動を続けることができたので、そこは付属中高の良いところだと思います。
ーーやはり高校3年生の最後の時期まで部活を楽しめるのは、付属中高ならではの良さですね。他にも付属中高ならではのことってありましたか。
そうですね。高校3年生で、明治大学への推薦が決まった後の1~3月は学校に行かなくて良いので、かなり長期間、自由な時間となります。普通は自動車免許を取りに行ったりして有意義に使うのですが、僕は山手線を徒歩で一周したりして過ごしました。
山手線を歩いたのは1月だったと思います。友達と朝7時に集合して、山手線の線路沿いをぐる〜っと一周します。一周したら夜7時になってて、意外と時間がかかったなぁと友達と盛り上がっていました。友達と話しながら歩くのは楽しかったです。
ーー高校3年の1月ですよね。大学受験が必要な進学校ではあり得ない時間の使い方ですね。でもゆっくりした時間が流れているのが伝わってきて、良い時間の使い方だと思います。
行事を楽しむには自ら楽しもうという姿勢を持て
ーー次に文化祭などの行事の話を聞かせてください。インターネットの評判では、文化祭はあまり楽しくないというネガティブな話も見かけましたが、実際はどうでしたでしょうか。
僕はとても楽しかったですよ。例えば文化祭ではいくつかバンドが演奏するのですが、僕は観客として大はしゃぎして、盛り上げていました。ただ、楽しくないという人の気持ちもわからなくはないです。というのも、出し物をするのは主に高校3年生で、高1、高2では出し物をしないクラスも多いんです。それに、高校2年生以下は文化祭の日は、登校したあと1時間くらいしたら帰れるので、存分に楽しむためには自分から楽しんでやろうという気持ちが必要かもしれません。
ーーなるほど、自分から楽しみにいくべし、と。体育祭はどうでしたか。
体育祭も盛り上がっていたと思います。盛り上がる競技があるんです。
例えば高校3年生の騎馬戦や、高校2年生の棒倒しです。学年全体を2チームに分けて、200人対200人で戦います。競技に参加している人は燃えていますし、観客側としても迫力があって見応えがあります。
そういうチーム競技の他に、100m走や棒高跳びなど一般的な陸上種目について、各種目の学年代表が歴代校内記録の更新に挑戦するという時間があって、これは記録を更新しそうな時は盛り上がります。棒高跳びなどは、見ていて記録がわかるので、今から歴代記録に挑戦するという時はワクワクしました。
ーーそのドキドキ感わかります。筋肉番付という番組でケインコスギが跳び箱に挑戦していた時の空気感と似たようなものを感じます。
メリハリのある厳しさが心地よい
ーーそれでは校則など規則面について聞いていきたいと思います。校則は厳しいと感じましたか。
自由度はないですが、僕はあまり気になりませんでした。頭髪検査は月1回ありますが、僕は元々短髪ですので、全然問題なかったです。携帯電話は朝回収されますが、校舎内で触ろうともあまり思わないので、束縛されている感覚はありませんでした。
学校外で友達と連絡を取って遊ぶことはもちろんできるので、個人的には「楽しめる程度の厳しさ」だったと思います。
ーーでは厳しい先生はいらっしゃいましたか。
明治大学付属中野では、柔道か剣道が必修なのですが、僕は剣道を選択していて、その剣道の先生が厳しいと言えば厳しかったです。でも僕はその先生が好きでした。
社会常識としての礼儀作法はしっかり教えられます。多少反抗的な子でも、きちんと礼儀作法を身につけていったのが記憶に残っています。しかしその先生はいつも厳しいなんてことはなく、厳しくすべき時だけ厳しいという、メリハリのある方でした。
その先生は古典を担当しているのですが、授業の質も高く、先生のおかげで僕は古典が好きになりました。
他の先生についても、僕の知る限り理不尽に厳しい先生はいなかったです。
ーー剣道の先生はメリハリのある良い教育者だったのですね。それでは、最後に明治大学付属中野中学を目指している小学生に一言お願いします。
高確率で彼女はできないけれど、男子校は楽しいです。男子同士すぐに仲良くなれて、馬鹿げたことをやってもみんなで楽しめます。また、礼儀作法の教育がしっかりしているので、恥ずかしくない大人になれると思います。そして明治大学に入った後も、大学に中高の友達が沢山いるので、多くの中高の友達と友人関係が続いていきます。
僕は中高時代を振り返ってみれば、本当に充実してたなと思います。楽しくない時はありませんでした。明治大学付属中野中学に入学して良かったと思っています。
その他細かい情報
・食堂について
中学生は使えない。高校生は使えるが、僕は米の炊き具合や味が好みではなく、お弁当を持参していた。周りにも同様の生徒はいた。
・いじめについて
僕が知る限りなかった。
・不登校について
数名いて、先生はケアしているようだったが、詳しくはわからない。
・留年について
僕の学年にはいなかった。コロナがあったため、本来なら留年に該当する水準の成績でも、レポートを出せば進級できるという特別対応がとられた。
・明治大学への推薦が貰えなかった生徒について
明治大学への推薦が貰えない生徒は学年で40人程度いるので、僕の友達にもいた。推薦を貰えないのが分かるのが高校3年生の2学期末。これらの人たちは、指定校推薦を使って他大へ進学する人が多い。進学先は日本大学などが多かったと思う。
・文系・理系の選択について
高校2年生に上がる時に文系か理系かを選択する。基本的には受験がないので、受験戦略など気にせずに、純粋に好きか嫌いかで選べるのが良い。
・卒業後の異性との会話のぎこちなさについて
個人的には高校卒業後、大学で異性と会話するときに、ぎこちなさや異常な緊張感を感じることはない。
・移動教室について
中1・中2・高1の時に移動教室という名の長野旅行に行く。学校が長野県に岳明寮という寮を持っていて、そこに中1は2泊、中2・高1は3泊する。
グラウンドでスポーツ大会をしたり、バーベキューをしたりして非常に楽しい。中1では近くの大学で農業を手伝ったりもした。
中学生の時は先生がやることを全て決めていたが、高校1年生になると、スポーツ大会の内容を生徒に決めさせてくれるので、一層楽しさが増した。
・修学旅行について
中学では中学3年生の時に京都・奈良に行った。京都では1日タクシーを貸し切って自由に観光して楽しかった。高校では高校2年生の時に沖縄に行く予定だったが、コロナで行けなくなってしまった。その代わりのイベントとして、スポーツ大会が開催された。
・高入生と内進生との関係について
高入生も内進生も同じクラスに混じるが、気まずい関係になることは全くない。問題なく仲良くなれた。高入生と内進生とを区別して接する態度を変えている人はいなかったと思う。僕の周りは誰も気にしていなかった。
学力については、高校1年生の時は、高入生の方が英語ができるため、平均で見れば高入生の方が成績が良かったと思う。しかし次第に高入生と内進生との学力の違いはなくなっていく。
・学校公式の成人式について
学校公式の成人式については聞いたことがない。普通の成人式に行って、母校の友達と集まって一緒にどこかに遊びに行くと思う。
インタビュアーあとがき
Sくんは、何事も忌憚なく話してくれる純粋な学生という印象を持ちました。大学ではアメフト部でほぼ毎日練習を頑張っているいるそうで、大学生活を満喫しているのが伝わってきました。中高からの友人との関係は今でもとても強く、良い友人に恵まれているようです。これからも、持ち前の素直さを活かして、道を切り開いていってほしいです。
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