聖光学院中学校の卒業生に学校のリアルをインタビュー
本物に触れる機会を通じて、「自主自立」を鍛える学校生活。温かい校長先生と先生方のサポートを受け、切磋琢磨しながら合格を掴み取る。
聞き手:
インタビュー日:2024年5月10日
記事作成協力:カナエ塾(塾HPへ)
卒業生経歴
聖光学院中学校→聖光学院高等学校→東京大学経済学部3年(インタビュー時)
今回は、今年度初めて「100名」の東大合格者を輩出した聖光学院出身のAさんにインタビューしました。塾や予備校に通わず東大現役合格を手に入れられる夢のような進学校。
何が合格へと導くのでしょうか。必見です!!
囲碁部の強い中学を志望
――まず、中学受験をしようと思ったきっかけを教えてください。
小さい頃から囲碁を習っていて、囲碁の強い中学に入りたい一心で受験勉強を始めました。
――その結果はいかがでしたか。
第一志望は不合格でしたが、第二志望以下は全て合格を頂きました。聖光は第二志望で、囲碁が強かったので入学を決めました。
――そうなのですね。それでは聖光学院での学校生活について伺います。
知的好奇心を刺激される「聖光塾」
――文化祭、体育祭、修学旅行など様々な行事があると思いますが、一番印象に残っているのは何ですか。
「聖光塾」という体験型の学習講座が印象に残っています。
――具体的にどのような活動を行うのでしょうか。
サイクリング、釣り、天体観測など、普段はなかなか体験できないアクティビティを長期休暇中に行います。自分で好きな企画を選んで参加しました。
――楽しそうな企画ですね。Aさんはどの企画に参加されたのですか。
僕は、「聖光学院と人吉高校宿泊行事」に参加しました。聖光では珍しい、他校との泊まり込みの企画です。熊本県にある人吉高校の皆さんと交流しながら、地域の課題を解決するための活動に取り組みました。半年間、毎週のようにリモート会議を重ねました。
――半年間とは長いですね。実際に現地には行かれましたか。
はい。最終的に、町おこしのアイデアを立案し、人吉市長にプレゼンテーションを行いました。先生方は口を出さず、バスの手配などの裏方作業に徹してくれて、僕達だけでゼロから企画を作りました。不慣れで戸惑うこともありましたが、なかなか経験できない貴重な体験でしたね。
本質的な理解が出来た英語。東大英語より難しい定期試験
――ありがとうございます。聖光には多様な体験学習が用意されているのですね。それでは、勉強面について伺います。聖光は英語教育に力を入れているようですが、実際にいかがでしたか。
そうですね。1対1のオンライン英会話など様々な取り組みも糧になりましたが、何と言っても、高1で出会ったW先生が僕の人生を変えてくれました。
――人生が変わる出会いですか!!
はい。中学まで、英語は英単語と文法を覚えるだけのつまらないパズルのように感じていました。しかし、W先生の授業を通じて、「英語は単語帳ではない」ということを学び、「こういう表現はこんな場面で使われるのか」と英語に対する理解が深まりました。その結果、受験でも得点源になりましたし、今では英語圏の人たちとも積極的にコミュニケーションを図れるようになっています。
――積極的に話し掛けられると世界が広がりますね。W先生の授業内容は具体的にどのようなものでしたか。
まず、授業までに長文を読み込み、気になった箇所を書き留めておく宿題が課されます。そして、授業では、みんなの前で先生にその箇所を質問するという形式でした。
――授業で直接先生に質問するのですか!!先生からは当てられないのですね。
はい。生徒側が質問しなければならないので、必死に疑問に思う箇所を探さなければいけません。誰も質問がないと授業が進まない緊張感はありましたが、みんなの質問から学ぶことが多く、大変勉強になりました。また、ニューヨークタイムズなど実際に使われている文章に触れるので、ネイティブの理解に近い本質的な英語を学ぶことができました。
――様々な長文を扱う場合、定期試験はどのようになるのでしょうか。
W先生の定期試験は、授業の「理解度」ではなく、「英語力」が問われるため、特定の試験範囲がありません。内容も高1で東大入試レベルの難易度を出題され、高2、高3では更に高いレベルになります。実際の東大入試が簡単に思える程でした(笑)
――東大英語が簡単に思えるなんて信じられません。Aさん自身はどのように勉強していたのですか。
「日常的に使われている英語に触れる機会を増やすこと」が効果的だというアドバイスを受け、友情や恋愛模様を描いたコメディドラマ『フレンズ』を見ていました。見ていてとても面白いですし、特に勉強になったのは、物語の中で観客が笑うシーンです。「何で笑っているのか」を瞬時に考え、意味の分からない単語があっても、その時の文脈から推測する力が身に付きました。
――笑うシーンが勉強になったのですね。実際にどれぐらいで成績の向上が見られたのですか。
英語は得意でしたが、半年後からさらに成績が上がり、高1の時に何も対策せず、英検準一級に合格しました。
――高1で英検準一級は凄いですね。もともと英語の成績が良かったとのことですが、幼い頃から英語を習っていたのですか。
いいえ。英語教室などに通ったことはありません。公文で少し習っていましたが、本格的に始めたのは中学になってからです。
――そうなのですね。小さい頃から英語に慣れ親しんでいたのかと思いました。英語を身に付けるのに早期教育が必要である風潮もありますが、Aさんはどのようにお考えですか。
そうですね。専門家ではないので分かりませんが、英語に対する「姿勢」や「覚悟」をどれぐらい持っているかが鍵だと思います。帰国子女の方は、実際に海外で生活されていて、英語が必要不可欠な環境にあったと思います。それに対し、日本で第二言語として学ぶ場合、ただただ楽しい時間を過ごしているように感じます。積極的な「姿勢」や「覚悟」があれば、僕のように早期教育なしで英語を習得出来るのも事実です。
成績は「一列目」。鵜呑みにしない指導方針
――貴重なお話をありがとうございます。それでは英語以外の成績についても教えてください。
総合成績は、学年で大体25位から50位ぐらいでした。学年順位50位以内は「一列目」とよばれ、勉強が出来るという共通認識でした。
――さすがですね‼「一列目」を維持されていた秘訣を教えてください。
先生方の指導方針に対し、懐疑心を持ちながら取り入れることです。良くも悪くも1年、もしくはそれ以上の期間を担当の先生と一緒に勉強することになります。指導方針が僕にとって「どのような効果をもたらしてくれるのか」というところを熟慮しました。指導の目的を考えながら勉強出来ると、効率が格段に上がると思います。
ほぼ全員が東大現役合格した選抜クラス。ライバルではなく同志
――Aさん自身の勉強方法が確立しているからこそ、先生の指導方針に懐疑心を持てるのですね。高2からは選抜クラスがあるとのことですが、どのような編成になっているのでしょうか。
高2に入ると文理に分かれ、文系がA~C組、理系がD~F組になります。そして、文理の上位30名ほどでC組とF組の選抜クラスが作られます。高2の間は選抜クラスに落ちたり上がれたりしますが、高3からは卒業まで変わることはありません。
選抜クラスと言っても、他のクラスと何ら変わりませんが、東大志望がほとんどだったので、そこでの一体感は独特なものでした。お互いを「競争相手」として見るのではなく、「仲間」として励まし合うことで、受験まで走り抜くことが出来ました。
――苦楽を共にする友達の存在は大きいですね。C組(選抜クラス)からどれぐらいの人が東大に合格されたのでしょうか。
クラス人数38名中34名は東大に合格し、1名は京大でした。
――クラスの9割が東大合格とは驚異的な数字ですね。成績が振るわない生徒に対し補習などはあるのでしょうか。
僕は平泳ぎの補習しか受けたことがないので、詳しくは分かりませんが、補習はあります。
また、補習とは別に、成績不振者に対しOBが指導する「あすなろ講習」があります。僕はそこで英語の講師をしています。
――どのような制度なのでしょうか。
高校に上がるタイミングでトータルの成績を鑑み、授業についていくのが大変そうな生徒を対象に、数学と英語を補習する制度です。
――手厚い補習ですね。熾烈な受験を乗り越えて合格された方でも成績が伸び悩むのは、どうしてなのでしょうか。
一概には言えませんが、中学受験の延長で勉強を管理したい親御さんがいるのは確かです。わが家もそうでしたが、いつまでも面倒を見ようとするご家庭の大半は上手くいっていません。
――中学受験で伴走してしまうと、離れるタイミングがなかなか難しいのかもしれませんね。その場合、どのような点に気を付けたら良いでしょうか。
中学受験でも同じですが、とかく偏差値や順位に振り回されている親御さんが多いので、そこだけで勉強の進度を判断して欲しくありません。偏差値は母体によって、何の意味も持たない数字になる場合もあります。数字に振り回されず、勉強がどれぐらい進んでいて、何が分からなかったのかを再認識する機会にして欲しいです。
逆に、子どもは「親が常に正しい」とは思わないことです。一旦、反抗する気力を失くすと、そのまま無気力になってしまい、自分を取り戻すまでに相当な時間を要します。実際に僕もそうでした。まずは、全てを親に委ねるのではなく、自分で考える力を身に付けることが大切です。
風通しの良い聖光
――貴重な経験をお話しいただき、ありがとうございます。中学受験は終わっても大学受験が控えているので、親御さんからすると心配になりますね。
大学受験と言えば、今年度初めて東大合格者「100名」という飛躍的な年になりましたが、この秘訣は何だと思われますか。
そうですね。選抜クラスの「一体感」も要因の一つになりますが、校長先生の存在は計り知れません。
――校長先生のお陰ですか‼私も学校案内の動画を拝見しました。とてもアグレッシブな校長先生ですね。
そうですね。積極的に活動されていて、優しくて面白く、何でも出来る校長先生です。他の先生方にもフレンドリーに接していらっしゃいます。
――校長先生と話されたことはありますか。
はい。何十回、何百回にもなると思います。
――私は校長先生と挨拶しかしたことがありません(笑) 何を話すのですか。
他愛のない話から、聖光塾の企画などの重要な相談まで親身に乗ってくれます。一時期、生徒の間では「校長先生は全校生徒の名前と顔が一致するのではないか」と噂されていました。食堂で昼食を一緒に食べたり、新年の挨拶動画ではその年の干支の被り物をして新年挨拶をしたり、みんなから愛されている校長先生です。
――生徒からこんなにも愛されている校長先生は素敵ですね。
受験勉強に直結している授業
――聖光学院の最大の強みは、塾や予備校に通わず、授業だけで大学合格を実現できることだと伺いました。Aさんも本当に通塾せず、東大に合格されたのでしょうか。
はい。通塾しませんでした。
中学のある時期、無理やり通わされましたが、モチベーションを見出せずにやめました。
――なぜ塾が必要なかったのでしょうか。
先生方に質問しやすい環境が整っていて、自習室も充実していたからだと思います。
職員室は生徒が入室しやすいように、柱や壁を出来るだけ無くし、ガラス張りで明るく、開放的な空間になっています。先生方も快く質問を受け付けてくれるので、良好な関係が築けます。礼節はわきまえますが、リスペクト出来る友達に似た感覚です。
――質問に行きやすい環境なのですね。続いて、充実した自習室について教えてください。
はい。高3の生徒が利用できる「ザビエルセンター」という自習室があります。土日祝日も朝7時から夜9時まで開放されています。多くの友達が勉強しているので、分からない箇所はすぐに質問していました。また、事前に注文すると食堂で夕食を取ることができます。
――夕食ですか‼それは驚きです。
美味しくてボリュームもあります。僕も自習室は頻繁に利用しました。聖光の自慢ですね。
――ありがとうございます。塾が必要ないとのことですが、分かる範囲で通塾率を教えてください。
中学では、ほぼ聞いたことが無いので1%ぐらいだと思います。高校では、30%ぐらいの生徒が通塾していました。
――高校になると通塾率が上がりますね。
そうですね。大半は高2前後から受験勉強に本腰が入り始めます。通塾といっても、自習室利用が目的だと思います。
通学に時間のかかる人が家の近くで集中できる場所を確保するために、数科目を受講していた印象です。
――自習室の利用目的に通塾されるなんて、本当に塾が必要ないのですね。
はい。塾の必要性を感じませんでした。塾に通うと、学校と塾の両方をインプットしなくてはならず、暗記やアウトプットする時間が少なくなります。学校だけであれば、自分のペースでアウトプットし、より効率を上げることができます。
――「塾なしの聖光」の所以が良く分かりました。それでは、どのような人が聖光に合うのかを教えてください。
みな友達は作れていたと思うので、「合わない人」はあまりいないと思います。合う人を挙げるなら、好奇心が強かったり、自分の好きなものを追求できたり、自分で何かを作り出すことが好きな人です。生徒の自由を尊重してくれて、やりたいことをやらせてくれる学校なので、「自ら何かを作ろう」という考えを持っている人には輝ける場所です。
――ありがとうございます。最後に、聖光学院を目指している小学生にエールをください。
今、頑張れば楽しい中高生活が待っています。僕は良い友人や先生に恵まれ普通の高校生ではなかなか出来ない経験を沢山させてもらいました。先生方から受けた教えは今もずっと活きていますし、同級生たちとは一生続くような縁が出来ました。聖光で過ごした時間は一生忘れないし、今後の人生に繋がっていくのだろうと思っています。
中学受験を全力でやりきるという経験は、必ず今後に活きます。自分を追い詰め過ぎず、問題を解く楽しさを忘れずに頑張ってください。受験勉強は、最高の中高生活を送るための自分自身への投資です!
その他
・校則や身なりについて
自由だが、流石に髪を染めるのはNG。
・携帯電話の使用について
中学では厳しいが、高校になると取り締まりも緩い。
・学食について
中学生も利用可能。
クオリティが高い。メニューが豊富で美味しく、量もある。校長先生や先生方も食べに来たり、長期休みでは併設の幼稚園(経営母体が同じ)の保護者やお子さん、近くにお住まいの方々も散歩がてら食べに来たりする。おすすめのメニューは、日替わりのランチやラーメン。アイスは味が豊富。
・購買部について
近隣のパン屋さんが毎日販売している。他にもカロリーメイト、おにぎりなどがある。
・水泳の授業について
屋外プールにて行われる。
・いじめについて
どの学校でもある生徒間のいざこざはあったが、特有のいじめは無かった。先生方は定期的な個人面談などで生徒間の関係を把握しており、何気ない気配りなどで事前に防がれていた印象。
・不登校者について
不登校になっても問題ないように、授業のフォローや面談などが行われており、手厚くサポートされている。留年や高校に上がれない人は聞いたことがない。
・部活について
中2まで何か1つの部活に入ることが必須。
ただ、部活に行かなくても特に何か問題になることは無い。中3からは兼部も退部も入部も自由。
Aさん;囲碁将棋部
活動頻度 中学 週2・高校 週2
人数の減少もありモチベーションが低下し、中3の頃からあまり参加せず。
・課題について
先生方のプリントや宿題が充実しているので多かったが、忙殺される程の量でもない。
・成人の集いについて
成人の日に横浜にて開催。
インタビュアーあとがき
東大現役合格率が開成と並んだ神奈川トップの進学校。
塾に通わず東大現役合格は都市伝説かと思いきや、何十名もの生徒を東大に導いています。この驚異的な数字を支えているのは、校長先生をはじめとする先生方の並々ならぬ生徒への愛情と、失敗を恐れずに果敢にチャレンジする姿勢だと感じました。
時代とともに革新し続ける聖光学院から、ますます目が離せません。
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