女子学院中学校の卒業生に学校のリアルをインタビュー

「空き缶を拾って缶蹴りを始める」自由な学校で日々行われる「話し合い」が主体性を育て、「芯を持った強い女性」を生み出す

インタビュー日:2024年4月30日

卒業生経歴

女子学院中学校・高等学校→四年制大学→現在アーティスト
今回は、女子学院中学校・高等学校に進み、自由な校風のもと、自分の芯を育てて四年制大学に進学し、現在、アーティスト活動をしているhechima,さんにお話を伺いました。圧倒的な進学実績を裏付ける集中力の秘訣や、授業や部活などで繰り広げられる話し合いが培う主体性、体育祭・文化祭・ハロウィンなど他の学校には見られない特徴的な行事の数々が楽しめる「空き缶を拾って缶蹴りを始める」学校での生活についてお伝えします。
「缶蹴りを始める」自由な校風
――まず、女子学院中学校・高等学校を選ばれた理由を教えてください。 もともと中学受験するつもりはなかったのですが、小学校のときは勉強が結構好きだったので、してみようかなという感じでした。その中で、自由な校風や私服や、「女子御三家」の空き缶の話を聞いて、楽しそうだと思ったことから第一志望に選びました。 ――女子学院は桜蔭・雙葉と合わせて「女子御三家」ということは知っているのですが、「空き缶の話」について詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか? 女子御三家に入る人の性質を空き缶が落ちたときの行動で例えた話があるんです。桜蔭の人は空き缶が落ちても気づかずに勉強をしている。雙葉生は空き缶に気づいたら拾って捨てる。その中でも女子学院は缶蹴りを始めるという感じで、この自由な空気に魅力を感じました――面白い話ですね(笑)。そうして女子学院に入られるために勉強を始められると思うのですが、他に受けた学校はありますか。また、その中で女子学院を選ばれた理由を教えてください。 鷗友学園女子と、東京学芸大学附属世田谷と、東京農業大学第一を受けて、ありがたいことに女子学院含め、すべて合格をいただけました。女子学院はもともと一番偏差値が高い第一志望校でしたし、私にとってはチャレンジ校でしたので、入学を決めました。 ――無事、合格して入ることができてよかったです。そして、憧れの女子学院に入って学校生活を送ることになると思うのですが、入る前のhechima,さんだけでなく、我々外部の人間からしても、貴学は自由なイメージがある学校です。そうした、学校の自由さを象徴するようなエピソードがあれば教えていただいてもいいでしょうか。逆に、世間で言われているほど自由じゃないよということであれば、そちらのエピソードもお聞かせください。 イメージ通りだったと思います。印象に残っていることでいえば、ディスカッションが多い学校だったかもしれませんね。生徒に色々話し合わせて、決めさせるということが多かったイメージがあります。自由といえば、自由ですね。 ――生徒間の話し合いが中学生のときからあるのですね。 そうですね。また先生と話しあう機会も多いです。先生の意見も聞きながら進めていくので、完全に何でもしていいというわけではありません。生徒たちで話し合いをした後、先生との話し合いで決まった結果に従う形ですね。
話し合いの機会が育む主体性
――ありがとうございます。先ほどの話し合いの活動を聞いていてもなるほどと思ったのですが、女子学院の生徒は自立心が強く、自分の意見をしっかり言うようなイメージがあります。それに関しては実際どう思われますか。また、生徒がそうなる理由は先ほどのように議論をする機会が多いことが関係あるとも感じるのですが、そちらに関してもご意見をお聞かせください。 その通りですね!自立心が高い子が多い印象です。そしてその理由もおっしゃる通り、意見を言わないといけない場面が多いのでそうなるのだと感じます。授業というよりは、部活でそうなることが多いですね。部活にもよるのですが、運動部系はそうした話し合いが多いイメージがあります。 ――そうなのですね!運動部はどちらかと言えば、活動時間はずっと練習に割くイメージがあるので、新鮮です。 部活の時間は練習するのですが、朝や昼などの部活外の時間もけっこうみんなで集まって話し合ったりするんですね。部活をどうやって進めていけばいいのかといった今後の方向性の話をよくしてしました。 ――中学2年生では女子学院の御殿場寮でに泊まって、決められたテーマについて議論する「ごてんば教室」という話し合いのイベントもあるみたいですね。 結構前なので詳しいことはあまり覚えていないです(笑)。ただ、覚えているものでいうと、高3のときも御殿場じゃない違う場所で同じようなことをしました。「修養会」というイベントです。 ――学生時代に何度もそうしたイベントがあるのですね!ちなみにどんなことを議論したかは覚えておられますか? おぼろげなのですが、「幸せとは何か?」とか「将来どうするか?」とかそういったテーマがあった記憶があります。いっぱいいろんなテーマを出されて、自分が興味あるテーマに投票して、そのグループで集まって話し合いをしましたね。
華やかな文化祭・ハロウィンなどの行事を楽しむ
――自分の人生について考え、他者の意見も聞ける貴重な機会ですね!ありがとうございます。ところで、hechima,さんは運動部系の部活の事情に詳しいですが、hechima,さん自身もそうした部活に入られていたのですか? そうです!創作ダンス部に入っていました。 ――なかなか面白そうですね!ちなみに中学・高校とは部活動の活動頻度などはどのくらいだったか覚えておられますか? 中学時代も高校時代も、週3で活動していました。高2の秋で引退してからは、大学受験に備えましたね。 ――ありがとうございます。ちなみに創作ダンス部の活動について詳しくお聞きしたいのですが、どうした活動が印象に残っていますか? 文化祭ですね!いろんな行事がありましたが、一番印象に残っています。創作ダンス部の1年の目標がそこでした。講堂という場所があって、そこで60~70分くらい時間をとってダンスで伝えたいことを表現させてもらいました。高2が幹部になって、踊るテーマを決めて、振り分けを決めて、いろんな作品を踊りました。保護者やOGと女子学院を受けたい子たちにも見てもらえましたし、それが一番印象に残っていて、楽しかった思い出があります。 ――講堂だけに、行動的な女子学院の方々にはとても合うイベントですね(笑)。すみません、脱線しました。他にも何か覚えている行事などがあれば、教えてください。 ハロウィンのイベントですね。屋上庭園という中庭があるのですが、渋谷のハロウィンみたいになります(笑)――それはみんな騒いで問題になるという感じでしょうか・・・(笑) そうはならないです(笑)。ただ、みんな仮装してそこに集まって写真を撮るのですごい人口密度になります。ベランダからその様子を見ている人もいましたが、楽しかったですね。
受験が近くなるとほぼみんな塾には通う
――ありがとうございます(笑)。なかなか華やかな女子学院の生活についてお聞きしてきました。次は、hechima,さん自身の学業についてお伺いしたいと思います。通塾についてお聞きしたいのですが、hechima,さんはいつ頃から塾に通われ始めましたか? 中1のときに地元の塾に通いだして、英語を勉強し始めました。中2になってからは、母親の勧めでお茶の水ゼミナールにも入って数学の勉強を頑張りましたね。最終的には、大学受験までお茶の水ゼミナールに統一しました。 ――ちなみに周囲の中学、高校でのおおよその通塾率はどのような感じでしたでしょうか。 中学のときはそんなに周りは通っていませんでしたね。塾に通っていたのは2~3割くらいかなという印象です。高校1年生〜2年生ごろから通いはじめる人が多くて、3年生ぐらいになると、ほとんどみんな通っていましたね。 ――ありがとうございます。ちなみにhechima,さん自身の成績はどのような感じでしたか。中学・高校どちらもお聞きできると嬉しいです。 実は中学のときはめちゃくちゃ良くて、クラスでも上位だったんですが、高校でやる気をなくしてしまって、真ん中からちょっと下くらいが定位置になりましたね。 ――なるほど!言いづらいことだとは思うのですが、中学のときの成績がよかった理由と、高校で成績が低下した理由をお聞きしてもよろしいでしょうか。 自分は入試も運良く受かったと思っていたので、「もともと女子学院の中では地頭や勉強の素質が高い方ではない」と考えていました。中学のときはその意識があったので、頑張って勉強していたんですが、高校に上がるくらいで先生にちやほやされて調子に乗ってしまって(笑)。自分はできる子だと錯覚して勉強をしなくなった結果、成績も落ちてしまいました。慢心は良くないですね。あとは、ダンス部の部活の方が楽しくなって、そちらの方に寄っていったのが大きいですね。高校では、周囲から「ダンスの人」と認識されるようになっていました(笑)――なるほど、ありがとうございます。ちなみに学校では成績が悪い人を補習などでフォローする体制はありましたか? 赤点を取らない限りはあまりなかった印象です。自分から聞きに行くことはあまりなかったですね。赤点を取ったときは、補習というよりは再テストがありました――ちなみに、学校の課題やテストなどはどんな感じで出ていましたか? 漢字テストなどは毎週ありましたね。あとは英語の予習とか、古文の予習とか、「してきなさい」という感じで課題がでることはありました。「宿題が大事」というよりは、「予習と復習をしっかりやる方が大事」といった教育方針でした。授業内のテストはあまりなかったですね。 ――課題に関しては、1日にどれくらいの時間をかけて取り組まれていましたか。 1日1時間くらいはやっていましたね。私は授業中にやっていました……(笑)。 ――いわゆる内職ですね (笑)。授業の話もお聞きしたいです。印象に残っている先生や、先生の授業などがあれば、エピソードを教えていただければ幸いです。 高校2年生のときに授業を受けた数学の先生ですね。問題集を解いてきて、その解答を先生に見せたら赤字を入れて指導してくれる方でした。面倒見がよかったですし、質問もとてもしやすかったです。私はそれまで数学が苦手だったのですが、その先生のおかげで、割とできるようになりましたね。
ロリータファッションをしたり日傘をさしたりしている人もいるなど寛容で自由な校則
――ありがとうございます!ちなみに、次は校則についてお伺いしたいと思います。髪型や服装や化粧など、身なりに対する校則について厳しいと感じたことはありましたか。 まったくありませんでした(笑)。何もかも自由でしたね。一応、「メイクは体育のときにするな!」とは言われていたのですが、そもそも体育中もメイクしていた人はほとんどいなかったです。私服に関しては、みんな好きなファッションができたのが良かったですね。ロリータみたいな服を着ている人もいましたし、日傘を差している人もいました。 ――本当にとても自由なのですね(笑)。 そうですね(笑)。それでもお咎めなしでした。さっきお伝えしたハロウィンではみんなで仮装を持ってきて学校内で着替えて楽しみましたし、体育祭でもそういうのがありました。うちの体育祭は学年対抗で、学年ごとに色が違うのですが、うちの学年は真緑だったのでみんな全身真緑でした(笑)。全身タイツの人もたまにいました(笑)――それは壮観ですね(笑)。ちなみにスマホなどは持ち込み可能でしたか? 持ち込みはできたのですが、使うのは禁止されていましたね。
自分の道を切り開くタイプに向いている
――ありがとうございます。いよいよ最後の方になってきました(笑)。学校の性質についての質問です。女子学院のホームページを見ると、留学などの海外の文化に触れるような制度については記載がなかったのですが、実際そういう機会は少ないのでしょうか。 そうですね。私が記憶してる限りでは、留学している人はほぼいなかったです。学校が留学を推進しているわけではないので、夏に短期だけ留学に行って帰ってきている人はいましたが、丸々1年海外に行っていました!っていう人は印象にないですね。 ――それだけ日本での教育に特化しているのですね。それもあってか、女子学院は、各難関大学に驚異的な合格実績を誇っていますが、その源泉は何だと思われますか。地頭はもちろんあるとは思うのですが、女子学院のカリキュラム、生徒の空気感といった、環境面での要因があればお聞きしたいです。 「進学校」であるという性質が大きいかなと思います。大学受験をする人がほとんどなので、高2〜高3ごろになってくると、その空気が充満してきます。「みんな勉強はして当たり前」という感じですね。それに刺激を受ける人も多いと思います。基本的に自分の意思を持っている人が多いので、「合格したい!」と思う学校を見つけたらその目標に向けて頑張る素質を持っている学生が多いと思います。 ――なるほど、ありがとうございます!最後になりますが、どういう⼈がこの学校に合うと思うかをお聞きしても大丈夫ですか。 個性豊かな人、自分を持っている人、または今は持っていなくても自分を持ちたい人がいいと思います。中高の期間は人格形成にとても大切な時期です。女子学院に入ったら、自分の芯が育ち、こだわりや自分の意見を強く持つようになるので、自分の道を切り開くタイプに向いているかなと思います。私も女子学院に入って良かったなと思います。なりたい自分を持っている人は、それに向かって頑張れますし、そのおかげで卒業した後に強くなれるので、おすすめしたいです。 ――ありがとうございました!
その他細かい情報
・食堂・購買部について 食堂はない。小さい購買がある。食べ物も売っており、中学生も使える。 ・プール授業について 中1の夏に短期間だけ実施される。学外の施設内の温水プールで行われる。 ・付属⾼校進学時の退学者について ほとんどいない。成績が悪くても学校側もどうにかして上がらせようとして尽力している。hechima,さんの周囲にはいなかった。 ・⾼校での留年について 留年者はいなかった。留年レベルになると、学校も手を尽くそうとする。 ・いじめについて なかった。不思議な子がいても「不思議だね」という感じで終わる。みんな自分と合わない人とはわざわざ関わらない。 ・不登校者へのフォロー体制について 不登校者はたまにいた。保健室があって、そこの先生が話を聞いてくれる。ただ、フォローする仕組み自体はあったかはわからない。

インタビュアーあとがき

学校生活を満喫し、一本の芯を持った人間へと成長されたhechima,さん。自己形成のとても大切な6年間で、仲間と目標に向かって部活や勉強に打ち込んだり、物事を話し合ったりした習慣が、活動的で自分を持って行動ができる大人としての今のご自身を形作っておられるのだと実感することができました。これからも彼女は自分の考え方を大切にして、自らの道を切り拓いていかれるのだと思います。
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