東京都市大学等々力中学校の卒業生に学校のリアルをインタビュー

“noblesse oblige” 管理の行き届いた環境で過ごす穏やかな学生生活で、高潔な精神は育まれる。TQノートを制する者は人生を制す。

インタビュー日:2023年10月2日

卒業生経歴

東京都市大学等々力中学校高等学校 → 横浜国立大学理工学部数物・電子情報系学科1年(インタビュー時)
中高生活にとどまらず、大学に行ってからも、そして社会に出てからも、常に「大切だ」と言われ続けるものとは?でも継続して管理するのは難しいものとは? そうです、生活習慣です。 高校の時までに良い生活習慣を身に着けることができていれば、今どんなに楽だっただろう…そんなことを思う今日この頃です。 今回は東京都市大学等々力中学校高等学校を卒業し、現在横浜国立大学理工学部に在籍しているAさんにインタビューしました。大学生になっても規則正しい生活を送るAさんは、その生活習慣が中高を通して身についたと言います。Aさんの通っていた東京都市大学等々力中高には、どのような制度があるのでしょう。
世田谷の落ち着いた環境で過ごす6年間の平穏な学生生活
――まず、東京都市大学等々力中学校を選ばれた理由をお聞かせください。 親や塾に勧められたのが一番大きかったです。自分自身、小学生のころは進路について特に何も考えておらず、親が受験雑誌を見て調べ、レベル的に自分に合うのではないかと言われたのがきっかけで一度校舎を見に行きました。そこで見たきれいな校舎を気に入って受験する決意をしました。 ――校舎がそんなにきれいなところなんですね。 もともと女子高で(15年ほど前まで東横学園という名前の女子高だったのを東京都市大学が買収して共学化した経緯がある)、共学化されたタイミングで校舎の建て替えがあったので校舎は新しくて結構きれいですね。場所が世田谷ということもあってか、周りの人や街などの環境も落ち着いている雰囲気があって好きでした。 校舎が住宅街に位置するため、通ってはいけない道があったり、指定の通学路があったりしました。目立った違反があると住民からクレームが入ることもあり、その場合一週間ほど先生が通学路に立って誘導が入っていました。 ――土地柄ならではの厳しさがあるようですね。校則は厳しかったですか? 自由に過ごしたいという人にとっては厳しいものに感じるかもしれません。制服のほかにも靴下やかばんなど指定のものがあります。髪を染めるのは禁止で、セットしていると注意を受けます。化粧も校則では禁止されていますが、目立たない物であれば黙認されていたと思いますね。 髪形などに関しては最近だんだんと緩くなっている部分もあるようですが、それでも服装や髪形にこだわりがあったり興味があったりする人にとっては厳しいものに感じるかもしれないです。スマホについては、通学時は電車を降りてからは電源を切るように決められていました。
TQノートで改善する生活習慣。徹底した学生への面倒見の良さ
――ルールが細かいですね。いや、面倒見が良いですね。 先生方の面倒見は大変良かったです。特に印象に残っているのは数学の先生で、等々力では入学すると一人一台iPadが配布されオンラインで課題を提出したり、先生に質問したりできるのですが、自分がふと気づいて送ったちょっとした意見や質問にも、一つ一つに丁寧な対応をして下さいます。そのやり取り自体も楽しくて数学が好きになるきっかけになりました。 授業外ではTQ(タイムクエスト)ノートという学習計画を書き込むための専用ノートがありました。朝の5時から夜の0時まで、30分毎に点線が入ったスケジュール帖のようなノートで、学習計画を管理していました。 毎週の初めに一週間の予定を書いたものを先生に提出し、その日の最後に返却されるノートには勉強時間のバランスについての先生からのアドバイスが書かれます。各曜日に立てた予定の行の下に、実際はどうなったかを書くための行が用意されているので、そこにも毎日線を引くことでどれくらい計画が達成されたかを評価することができます。最後にその日の感想や反省を書く欄があり、振り返りができます。 ノートは毎日提出できて、返却されるノートには毎回先生から一言が書かれて帰ってきます。どういう生活をしていたのかが見えて、フィードバックを受けながら計画的に勉強できるようになるのにとても役に立ちましたね。 中学校1年の冬に一念発起して、学校の校門が開く朝7時に登校して勉強するために早朝の5時半に起きる生活を始め、それをきっかけに成績が急激に伸びたのですが、それもTQノートの成果と言えるかもしれないですね。週の終わりに睡眠時間の線が一週間きれいにそろっているのを見た時はとても嬉しかったです。 ――規則正しい生活を送るのにとても役立ったということですね。どうでしょう、大学に来てからもその習慣は続いていますか? 今のところ継続できています。0時には眠くなって、朝も7時には自然に目が覚めます。ポケモンスリープの画面を見ればわかりますよ。今TQノートの成果が最も出ているのはポケモンスリープですね(笑)。半分冗談ですが、TQノートのおかげで今も規則正しく生活できているのは本当です。 ――1年生の冬に成績が劇的に伸びたとのことですが、順位で言うとどれくらい伸びましたか? 自分が所属していたコースの全体80人中、40位から一気に6位まで順位が上がりました。
学生のレベルに合わせたコース分けと充実した英語教育の選択肢
――それはすごいですね。AさんはS特選コースに所属していたと聞きましたが、コースはどんな分け方になっているんですか? 中学ではS特選コース、特選コース、特進コースの3つがあります(編集注:特進コースは現在では特選コースに統合されている)。 中学までは単純に学力順にコース分けされます。高校2年の文理選択のタイミングで受験スタイルでのクラス分けになり、S特選、Ⅰ類、Ⅱ類に分かれます。国立志望はS特選、私立志望はその他、という振り分けになりますが、受験自体は自由にできます。 ――英語教育に特化しているコースもあるとお聞きしました。 GL特選クラスのことですね。複雑なのですが、先述した中学校の各コースは2クラスずつに分かれ、一学年合計6クラスになるのですが、中学3年から高校1年までの2年間は特選コース2クラスのうちの片方が「GL特選クラス」という、英語に力を入れるクラスになります。 そこに入ると英語の授業が他のクラスより多めに組まれていたり、人によっては海外留学に行ったりするクラスになりますね。 ――そのクラスに入る人はやはり英語の成績が優秀な人が多いのですか? クラスに入る条件はそこまで厳しくはないと思います。英検などの条件はありますが、持っていなくても希望すればそのクラスに入ることはできます(編集注:学校HPの情報では中学2年修了時に英検3級が最低条件)。 帰国生や極端に英語ができる人向けには「αクラス」という主に帰国生向けの英語の授業があります。αクラスの人は英語の時間だけ別の教室に行き、ネイティブの先生が担当する英語の授業を受けるようになっています。 なのでGL特選クラスは、帰国生が行くというよりは、英語に興味関心が高い一般生が行くクラスということになっています。留学プログラムが充実していて、他にも希望者は夏休みにオーストラリアに短期留学するプログラムもあるのですが、これには引率の先生もついて行くそうなのでその点も非常に面倒見が良いと思いますね。 ――幅広い英語教育の選択肢があるのですね。ほかに英語学習で特徴的だったことはありますか? そうですね。全体的に音読をさせる先生は多かったと思います。具体的に言うと、英語の授業で新しい単元に入った最初の授業では教科書の英語の本文を教室全体で立って三回読むようにしていた先生がいました。 他にも、中学の入学前の課題が特徴的だったと思います。小学校を出たばかりなのでまだ英語の授業を受けたことがない人がほとんどの中、指定の英語の文章を渡されたCDを頼りにすべて覚え、初回の授業で暗唱するという課題が出ていましたね。 文章自体は簡単だったのでなんとか覚えられました。タイトルがDreamという文章で、冒頭が“It was a Saturday morning in May.”という風に、最初の一文だけはいまだに覚えています。 その課題は毎年出るようで、中学1年から高校3年、卒業生まで全員覚えています。等々力出身の人に「Dream」と言うと全員が”It was a Saturday morning in May.”と答えると思います。(笑) ――将来絶対同窓会で盛り上がるやつですね。音読が多かったことについては良かったと思いますか? 良かったと思いますね。自分は英語が苦手でしたけど、暗唱できるまで音読すると、それだけで英語ができるような気になり、抵抗感が和らぎました。
中高一貫のシステムを生かした「実験から始める理科」の学習
――他の教科でも特徴的な教育があると聞きました。理科の授業は実験重視ということでしたね。 そうですね。中学校2年まではすべての授業が実験でした。座学が始まるのは中学校3年からで、それまで教室で行う授業は一回もありません。 ――とても極端ですごいですね。そんなに実験ばかりしていたら楽しくてみんな理系に進んでしまいそうですね。 そんなことはないです(笑)。 最終的に文理選択ではだいたい半々に分かれていました。とはいえ中学生のうちは楽しんで実験ができるので、極端なカリキュラムですが良い意味で中高一貫のシステムを生かしているんじゃないかと思います。 高校に入ってからはずっと座学のみで、急速に受験向けの学力をつけていきました。実験は減り、多い時期でも1学期に2回程度になっていました。
のびのびと活動できる部活動。勉強に集中できる環境整備
――都市大学等々力の勉強についてイメージできてきたところで、生活面についてもお聞きしていきたいと思います。部活はされていましたか? 中学校では野球部、高校ではバレー部に所属していました。野球部といっても、これは部活動全体にも言えることですが、部活動の活動自体が校則で週に4回までと決まっているので(大会前は特例が認められる)、そんなに厳しいものではありませんでした。部活が忙しくて勉強時間が取れないということはなかったです。 高校3年の最後の試合が終わったら活動終了で、それ以降は勉強一本でした。練習は18:10までに部室のカギを返すようにルールが決められていて、それを過ぎると1週間部活停止になってしまうので、特段帰りが遅くなるということはなかったです。 ――Aさん自身も部活動と勉強の両立はできていたということですね? はい。先述した通り部活動にそこまで時間を取られることはなかったので、そのせいで成績が落ちることはなかったです。 むしろ他にも活動をしていたくらいで、高校では文化祭(藍桐祭)の執行委員をやっていました。前年の文化祭直後から引き継ぎを行い、そこから1年間かけて文化祭の準備をするので、文化祭はかなりしっかりしたものになります。
課外活動にも寛容なサポート体制。一生の思い出になる文化祭執行委員の活動
――文化祭執行委員の活動は大変でしたか? そうですね。夏休みは毎日学校で活動がありましたし、直前期は毎日9時くらいまで学校に残って活動をしていました。パンフレットを作ったり、それをスポンサーのところに持ていったり、文化祭に出店していただく相手方に挨拶して回ったりしていました。それでも活動が楽しかったので続けられました。 そうした積み重ねもあった結果、文化祭でやれることもだんだん増えてきて、今年はコーヒーカップやジェットコースターを模したトロッコなどのような展示もされるそうです。 ――それはすごいですね。とても充実していたことがうかがえます。 とても充実していて、中高通して一番の思い出になったと思います。さすがに文化祭直前期に勉強と両立させるのには苦労しましたが、文化祭執行委員の活動を理由に部活を減らしてバランスを取っていました。部活動だけでなく、全体的な姿勢として課外活動への理解があり、サポート体制の整った環境だったと思います。 課外活動に関しては、等々力には行動力のある人も多く、毎年模擬国連に出たり学生ビジネスコンテストに出たりする人もいるのですが、そういった学校以外の活動に対しても頼めば快く顧問を引き受けてくれる先生ばかりで、そういった意味でも本当に面倒見がよかったと思いますね。
“noblesse oblige” を掲げて磨く、高潔な人間性
――教師の目の行き届いた環境でのびのびと過ごす学校生活が伺えましたね。次に校風についてお聞きしていきます。東京都市大学等々力中学校高等学校では「noblesse oblige」の精神を掲げ「高潔な若人が果たすべき責任と義務とグローバルリーダーの育成」を前面に押し出していますが、それを感じられる具体的な行事や授業はありましたか? 授業で扱うというよりは、教室に言葉として掲示されていたり、朝会などで校長先生の話に出てきたりと、日常的に意識させるようになっていました。 他には、毎年行われる宿泊学習のテーマ決めにも大枠として採用されていました。例えば、中学校3年の時には宿泊学習で福島に行ったのですが、その行先を決めるテーマのもとになっているのもそういう意識だと思います。 宿泊学習は毎年あり、学年ごとに時期は変わります。ある年には福島に行って原子力発電所の災害について学んだり、ある年は5泊6日で九州を一周したりしましたね。長崎に行って原爆の勉強をしたり、熊本に行って水俣病の資料館を回ったりするといったように、毎年の宿泊学習ごとに「noblesse oblige」の精神に基づいて学ぶテーマが決まっています。 コロナ前には、高校2年時に例年2週間ほどイギリスに行っていました。イギリスに提携している高校があり、そこの寮に泊まって観光したり、現地の学生と交流したりしていたようです。私たちの代ではコロナのため関西に行きました。 ――生活のいろいろな面で「noblesse oblige」の精神が活きているんですね。高校2年時の宿泊学習が、コロナのせいで関西になってしまったのは残念でしたね。 そうですね。ただ、海外に行くのは準備が大変なので、そういう面で楽になったのはよかったかもしれません。 例えば海外に行くとなるとパスポートが必要になりますが、用意するのは時間がかかることもあるので、例年1年前の段階からパスポートを作るように呼びかけられていました。 ――なるほど、僕が等々力の学生だったらパスポートを期日内に用意できる自信がありません。 (苦笑)
安心のカリキュラムとそれを支える教師陣の手厚いサポート体制
――東京都市大学等々力中高についてかなり具体的なイメージを持つことができました。どのような人が東京都市大学等々力中高に合うと思いますか? 前述したように校則がちゃんとしているので、身なりや所持品などについて圧倒的な自由を求めている人にはあまり向いていないかもしれません。 一方で、ちゃんと勉強したい人や安定して大学受験を戦いたい人には、学校側がしっかり管理してくれる制度やバックアップ体制が整っており、それに従ってちゃんとやっていればMARCHレベルの大学には行けると思うのでお勧めです。 また、課外活動など、勉強以外にも頑張ってみたいことがある人にも、先生方の協力が得られやすいので良いと思います。 落ち着いた環境があるので、穏やかな学校生活を送りたい人にもお勧めしたいですね。 ――最後に、東京都市大学等々力中高に入学してよかったと思いますか? もちろんです。何より、やりたいことは相談すればやらせてくれる面倒見の良さがありますし、受験に関しても学校のカリキュラムに沿ってやっていれば安定して大学受験を迎えられます。 さらに、学校別対策講座というのも先生たちが用意してやってくださります。心身・学力の成長という点において、本当に素晴らしい環境だったと思います。
その他細かい情報
・通塾について 学校の中に外部委託の個別指導サービスがあり、学校の進度に合わせた指導を受けられる。個別指導とは別に、高校では外部の先生を呼ぶ放課後講座も希望すれば受けられる。 他にも模試の成績が良かった人だけが受けられる外部提携の放課後講座もある。さまざまな生徒のレベルにあった選択肢があり、すべて合わせると半分近くの生徒が利用している。 これら学内の学習サービスを利用するとともに、並行して学外の塾を利用している生徒も多かった。感覚的には8割くらいが外部の塾に通塾していたと思う。 ・校舎について 生徒が全体で1500人程度いる一方で校舎は100m四方程度なので、人口密度が高く感じることもある。部活動では東京都市大学のグラウンドも使っている。 ・プールについて プールはなく、プールの授業も実施されない。 ・課題について 極端に多かったり少なかったりすることはなかった。日々課される勉強という意味だと、中学時代に「朝テスト」というのがあって、朝に15分間で曜日ごとに決まった科目の簡単なテストがあった(国語なら漢字30問、数学なら因数分解や図形の問題、英語なら文法や並び替え問題など)。このテストは70点以下だった場合その日のうちにやり直しをしないといけない。 逆に高校になってからは、あまり宿題が出されなくなった。高3になると全くと言ってもいいほど宿題が出なくなった。 ・成績の悪い人へのフォローについて 定期テスト後に基準の点数に満たない人は再指導という一定期間(一週間弱くらい)の補習がある。自分は一度もかからなかった。サボると家に電話がかかってくる。そのせいか極端に落ちこぼれることはあまりない印象。 めったにいないが、勉強などのやる気がなくなってしまう人が退学するというのはあったと思う。 ・給食および学食について 昼食は中学では給食、高校では学食か弁当になる。 給食の量は普通だが、給食として運ぶ際の決まりの関係で温度などに制限があり、おかずが冷めていることもある。 学食は中学生は使えない。量は多め。おすすめは唐揚げ定食。他にも、購買部でカロリーメイトなどの軽食を買ったり、自販機で菓子パンを買ったりすることができる。 ・いじめへの対応 いじめについてはかなり厳しく対応しており、問題が起こりそうな際はすぐに呼び出しがかかり対処される。いじめを目撃したことはない。 ・不登校者への対応 保健室登校することができる。「ひだまり」という名のカウンセリングルームがあり、カウンセラーが常駐している。

インタビュアーあとがき

とにかく面倒見の良い東京都市大学等々力中高の制度やカリキュラムが印象的でした。これだけのサポート体制がある学校なら、生徒も安心して学校生活を送れると思いました。インタビュー時、楽しそうに話すAさんの表情を見て、本当にAさんはこの学校が好きなんだなと感じました。正しい生活習慣が身につくというTQノートを僕も欲しくなりました。僕もポケモンスリープを始めようと思います。
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